2018年6月7日木曜日

「何かあったらお願いします」からの脱却?


先日、柔術アカデミーの更衣室で新しく入門された方から「仕事は?」と聞かれて弁護士だと答えたら、
If I get arrested, I’ll ask you.
と言われた。弁護士が身近なはずのオーストラリア出身者ですら、そういう感覚なのかと驚いた。

法律相談以外の機会で会った人に弁護士ですと名乗ると、決まって返ってくるのが
「何かあったらお願いします」
社交辞令だとは分かっているが、多くの弁護士は内心「何かあってからでは遅いんですよ」と呟きながら、その言葉を飲み込んでいる。

もちろん弁護士の本領は、発生してしまったトラブルへの対処と解決だ。日本には様々な法律職種が存在するが、最終的な紛争解決手段である裁判制度を担う弁護士は、必然的に紛争発生後の分野を主に担うことになる。
しかし多種多様なトラブルを扱った経験があるということは、「あのとき事前にこれさえしといてくれれば、ここまで大きな問題にならなかったのに」という経験も同じだけしているということだ。だから自分のように訴訟をはじめとする紛争事例を数多く扱っている弁護士は、トラブル予防に関してもそれなりの専門的知見を有しているという自負がある。

相談者依頼者らユーザーサイドにしても、トラブル発生後に弁護士に依頼するよりは、事前に弁護士に相談しておいて未然にトラブルを防ぐ方が、効率的でストレスも少ないし、たいていの場合は弁護士費用もはるかに安く済むはずだ。

「予防法務」という言葉は、ある程度の規模の企業やそういう企業を顧客とする中堅あるいは大手ビジネスローヤーたちの中でだけ使われていて、その他大勢の人たちには知られてもいないのが現状だと思う。

この現状を何とか変えることができないか?

「何かある」前に弁護士に相談してトラブル発生を防ぐことは、明らかにユーザーにとってメリットが大きい。
他方、弁護士にとっても、いつ来るか分からないし結果もどうなるか分からない紛争事例を主たる収入源とする「水商売」では、なかなか経営が安定しにくい。せめて人件費や家賃、光熱費に弁護士会費用などの固定経費を心配しないで済む程度の定収入があると、精神的にもだいぶ違う。古典的な方法としては顧問先を増やすことだが、それも簡単ではないし、「予防法務」を提供することにより自分たちも定収入を得て経営を安定させる方法は、もっと外にもあるんじゃなかろうか?

ということをこの間、何年もえんえん考え続けているが、良いアイデアは今のところ見つかっていない。果たして思考の方向性自体は合っているだろうか?

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