2015年12月2日水曜日

相談者からのいただきもの〜その2

先日書いたネクタイと並んで、相談者からいただいた中で思い出深いものと言えば、健康ドリンク1ダース(ユンケルのようなもの)。
逮捕や勾留された人が弁護士会に連絡すると、1度だけ無料で弁護士が派遣される当番弁護士制度。その日は当番割当日だったので、いつも通り弁護士会からの要請で出動。
失職したため家賃代を稼ぐべく、すぐに収入になる仕事を求人誌で探して見つけたチラシ投函バイト。行ってみたら風俗チラシ。マンションポストに投函してたら住人に通報されて、住居侵入で逮捕勾留されたという青年。明らかに勾留の必要性に欠ける事案だけど、そんなこと言ってても何も解決しない。普通なら、数日後の勾留満期に略式裁判で罰金刑になるはず。問題は、勾留までしてしまっている事案で罰金の支払い確保できるかどうか分からない時に、果たして検事が略式手続きを選択してくれるかどうか。もし検事が略式を選択せず正式起訴されてしまうと、1カ月以上も身体拘束が延びる可能性が高い。
事務所に戻り、友人の検事たちに電話して「自分やったらこんなときどうする?」と尋ねてみたところ、2人とも「うーん、悩ましい。略式は採らないかも」と言う。

こりゃますますヤバいと意を決して、郷里のお母さんに電話を掛ける。
「もしもし、私は弁護士ですが、息子さんが警察に捕まりましてね」。
誰がどう聞いてもオレオレ詐欺だ。案の定「そんな電話しょっちゅう掛かってくるんですよ。私は騙されませんからね!」とお母さん。「お母さん、僕のことは信用せんでええから、とにかく○○警察に電話して!」とかろうじて言い切ったところで電話を切られた。
こらアカン。放っておくわけにもいかないので、もういっぺん接見に行き、一部始終を報告して、すぐにお姉さんとお母さんに手紙を出すようにと伝えた。
数日後の夜、事務所で1人で仕事してると誰かが訪ねてきた。チラシ投函で捕まった子だ。手には健康ドリンク1ダースをぶら下げてる。結局、お母さんが警察に電話して詐欺じゃないことが分かったので、罰金納付の手配をしてくれ、略式で出てこられたとのこと。「わざわざ2回目の接見に来てくれたことがすごく嬉しかったから、お礼に来た」。手みやげに健康ドリンク1ダースを選んだ理由は「先生、疲れた顔してたし、仕事めっちゃ忙しくて大変や言うてたし」。接見時に打ち解けるために世間話をすることはよくあるけど、どうも彼には仕事の愚痴を話していたらしい。両手に瓶12本分の重みを感じながら、心の中は嬉しさ半分、情けなさ半分。
これまた今から10年ちょっと前のお話です。

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