昨夏、知人からの紹介で一晩だけホームステイを受け入れた。
彼女はボストンの大学に通う大学生。ついこないだ大学生になったばかりなのに、すでにノーム・チョムスキーの講演会に2度も参加し、大統領候補バーニー・サンダースやウォールストリート追求の騎手エリザベス・ウォーレンとも直接会ったことがあると言う。おそるべしボストン。なんだかんだ言っても、やはりアメリカ政治の中心地は東海岸だと思い知らされる。
バーニー・サンダースの大統領選撤退が事実上決まったとき、思わず泣いてしまったという彼女。彼女の父親ももともとはバーニーを支持していたが、民主党の大統領候補がヒラリー・クリントンに決まるや否や、なんとトランプ支持に変わったそうだ。
「なんでバーニー支持からトランプ支持に変われるんだ?両者はまるで正反対じゃないか?」
という僕の質問に対して、少し考えた後の彼女の答えは、
「それだけヒラリーが嫌いな人がいるっていうことなの」
いわゆるエスタブリッシュ(支配者層)嫌いがアメリカでかつてなく広がっているというのは、どうも間違いないようだ。確かに僕が在米していた2011〜2012年当時も、それはすでに感じられた。
「でもトランプは、『メキシコ人は泥棒だ』とか『イスラム教徒はテロリストだ』とか酷いことを言うじゃない。君のお父さんはそれには平気なの?」とさらに食い下がった。
男手一つで彼女を育て上げた父親は、自分自身が裕福でないにもかかわらず、ホームレス支援のボランティアなどを熱心にする人だと聞いていたので(父親と一緒にホームレスへの炊き出しを手伝いながら「うちより良い物食べてるじゃない」と子どもながらに思っていたそうだ)、そんな人がトランプを支持する姿が想像できなかったからだ。
それに対する彼女の答えは、
「あの街(オハイオ州シャロンセンター)の人たちは誰も、実際にはメキシコ人もイスラム教徒も会ったことがないから、そういうことをあっさりと信じてしまうの」
というものだった。それが事実だとすれば、今のアメリカは想像していた以上に深刻だ。また、日本にも同じ現象が起こりうるという意味では本当に恐ろしい。
ところで、まさに典型的な白人貧困層の彼女がどうしてボストンの有名私立大学に入学することができたのかが気になって、そのことも尋ねた。連邦政府の給付型奨学金を得ることができたので、大学を卒業するまでの学費は保証されているそうだ。酷い環境の中から這い上がってきた優秀な学生にだけは急激に手厚くなる良くも悪くもアメリカ的な競争システムは、這い上がろうとする者にも冷たい日本型システムよりはベターなんだろうか?