2015年12月28日月曜日

国際養子縁組

オランダでアメリカからの国際養子縁組が急増しているという記事ですが、興味深い論点が満載でした。
アメリカで生まれた子どもたちが他国に養子に出されているというのは初耳。一方、アメリカ人が毎年たくさんの国外で生まれた子どもたちを養子として迎え入れているという話はよく耳にします。
ロースクールの家族法の授業でも、国際養子縁組のテーマがありました。アメリカのような先進国に南米などから子どもを養子に出さざるを得ないような世界構造そのものが問題であって、国際養子縁組は何の解決にもならないと主張するコロンビアからの留学生と、そうはいっても目の前の子ども1人1人を救うのが先決であって、世界が変わるのを待っていられないという担当教授の論争が印象に残っています。
この記事では、アメリカ人養親は白人の子どもをほしがる傾向があるがオランダ人にはそれがないので、オランダでアメリカからの養子縁組が急増しているとの指摘があります。他方で、ロースクールの授業でケースワーカー出身の学生達は、黒人の子どもを白人家庭にあっせんしようとすると一部の黒人団体から「黒人文化を撲滅しようとしている」「民族浄化だ」などというクレームが入ることも、黒人の子どもたちの養子縁組が低率になっている理由の一つだと言っていました(前提として養子縁組されずに、成人するまでフォスターケアもしくは施設で養育されることはあってはならないことだという枠組みで議論されていることに僕は驚きました)。
このようにアメリカからの国際養子縁組が盛んな理由として、この記事は2つ指摘しています。一つは、乳児の国際養子縁組を認めているのがアメリカくらいしかないこと。もう一つは、同性愛者カップルへの養子縁組を認めている国はアメリカ以外にほとんどないこと。
オランダの養親達が、生みの母親とその家族とのつながりを保つために様々な工夫と努力をしているところも興味深い。アメリカの家族と一緒に子どもの名前を考えることを希望する養親が多いとも。養親達は、縁組み1件あたり350万円から500万円を斡旋団体に支払ってるようですが、しょっちゅうアメリカを訪問している辺りからも,この養親たちが相当裕福であることが分かりますね。
コメディドラマのフレンズでも描かれていましたが、妊娠中つまり出産前に母親が養親を選んで契約してしまう点には、いまだに若干の躊躇と驚きがあります。この記事に登場しているスーザンさんという母親(白人女性)の語りがすさまじい。
いわく、妊娠には刑務所に入ってから気付いた。数時間にわたって自分をレイプし続けた男か、ドラッグの売人か、とにかく父親が誰なのかは分からない。アメリカにいてたらこの子は、黒人社会からは半黒人と差別され、白人社会からは半白人と差別される。上の娘(白人)もそんな弟を受け入れるはずがない。だから国際養子縁組を選んだ。自分は売春婦という仕事柄、フォスターケアを経験した女の子達をたくさん見てきた。だから自分の子をフォスターケアにやるという選択肢は、最初からなかった_等々。

写真の子どもたちがみんな楽しそうなのが、いいですね。

2015年12月24日木曜日

「みんなの学校」

大阪市立大空小学校の元校長、木村先生が本を出されました。

来月16日には大阪弁護士会でドキュメンタリー映画「みんなの学校」上映会&木村先生・真鍋監督のトークイベントを開催します。子どもと関わる仕事や暮らしをしている人、考えている人すべてに見てもらいたい映画です。

映画の中ではあまり出てきませんが、教師の号令や「前にならえ」なんてなくても、子どもたちが自分で判断して整列し、行動し、学ぶ、そんなことが公立小学校で当たり前のように行われている光景は、実際に目にすると衝撃的で、ここに日本の教育の未来があると感じました。本や映画を通して感心を持った人たちが学校見学に行く流れが、今以上に広がっていくことを期待しています。










2015年12月23日水曜日

669人の子どもをホロコーストから救ったイギリス人

ナチの強制収容所から子どもたちを救ったニコラス・ウィンストンさんはしかし、自分が救えなかった子たちもいたことを悔いて、1988年まで全て隠していたそうです。
たまたま資料を見つけた奥さんに説得されてカミングアウトし、テレビ出演したときの映像。ニコラスさんにはサプライズが用意されていました。
ニコラスさんの周囲、一般視聴者席に座っていた人たちのうち80人はなんと、50年前にニコラスさんに命を救われたその人たちだったのです。感動的な映像です。


2015年12月20日日曜日

His smile on the machinery made me smile.

小児がんのレンゾくん3歳、メイク・ア・ウィシュ財団の計らいで建設現場を体験。本物のはたらく自動車運転席でご機嫌の彼の笑顔もいいけど、現場のおじさん達の表情も素敵ですね。


2015年12月18日金曜日

日本城タクシーの悪徳社長

こんなビジネスチャンスの創り方があるとは( ゚д)

「大阪はぎょうさんタクシーが走っている。そんななかでヘイトスピーチに反対しているタクシー見つけたら、『ようやってるなあ』と評価してくれるお客さんもいるはずや。わざわざ選んで乗ってくれるお客さんもいるかもしれん。そしたらウチも儲かるがな。な?悪徳社長やろ?」
「橋下さんは呼ぶべき相手を間違っている。市役所に招くのであれば、桜井じゃなくて市内に住んでいる在日の子どもたちだと思いますよ。子どもたちを市長室に招き入れて、こう言えばいいねん。『みんな心配せんでもええからな。おっちゃんが、あんたら守ったる。絶対に守ったる』」

現代ビジネス掲載・安田浩一氏の記事より

2015年12月15日火曜日

Diversity

先日、子どもを診ることの多い開業精神科医の方が「多様な個性が認められる、どんな子ももっと生きやすい社会に日本もしたい」という趣旨のことをおっしゃっていました。
ここから妻の友人の話です。お姉さんがフィアンセを連れてポルトガルから帰国したので、両親と5人で食事に出かけたときのこと。「サプライズがあります!なんだと思う?」とお姉さん。「今日わたしたち結婚しました!ジャジャーン!」
サンフランシスコ市庁舎ホールでは誰でも結婚式をあげることができるので、毎日たくさんの結婚式が行われています。お姉さん達が典型的な観光コースでもある市役所に行ったところ、役人から「今日は1組分空きがあるよ」と言われたそうな。ただし、結婚式には牧師や弁護士など司会をする人が必要。そこでお姉さんは、お父さんの知人の弁護士に電話して来てもらい、3人で結婚式をあげたそうです。
一部始終を聞き終えたお父さんは、「そりゃ、めでたい!お祝いしなきゃ!今日はちょっといいレストランにしといて、ちょうど良かったなあ!」
このいかにもカリフォルニアンで大らかなお父さん、実はイギリス生まれのイギリス育ち。れっきとしたイギリス紳士です(家族に言わせると、完全にアメリカ訛りになってしまっているそうですが)。
バークレーという街は、こういう自由な精神の人たちが世界中から集まってきているところでした。誰もがあらゆる考え方や価値観を尊重する、それが当たり前になっている街の独特の解放感を経験した今や、日本もそういう社会にしたいと思いが脳裏から離れません。歴史的に見ると日本はもともとおおらかな社会だし、特に大阪は高いポテンシャルを持っている街だと僕は思っているのですが。
ちなみにサンフランシスコ市庁舎は一見の価値がある、とても素敵な建物です。日本でここでの結婚式を斡旋する業者もあるみたいですね。

2015年12月10日木曜日

リッチモンドの警察署長

カリフォルニア州リッチモンドの警察署長が、この間連続して起きている警官による黒人殺人事件に抗議する市民プロテストに参加したというニュース。

このリッチモンドという街は、僕が住んでいたバークレーの少し北にある街です。コストコがあったので周囲の人はよく行っていたし、友人も住んでいたので、本来なら1度くらい行っててもおかしくない街です。だけど、ニュース報道を見ていると殺人事件が本当に日常茶飯事で、高速道路を普通に走行してたら流れ弾に当たって怪我したなんて事件もあったので、僕は恐ろしくて結局1度もリッチモンドには行きませんでした。
殺人事件が日常茶飯事ということは、ギャング同士の抗争が多いことを意味します。昔からあるシェルの化学工場が数年ごとに爆発事故を起こしてガスが流れるので、リッチモンド市役所には職員が一押しすれば市内全世帯に「窓を閉めて外に出るな!」との電話が一斉にかかるボタンも設置してあります(僕の在米中も1度ありました)。必然的に所得が低い階層が多く住むこととなり、貧困の連鎖の中でアフリカンアメリカンの若者の中には、殺すか殺されるかの道を選ぶしかない人たちも多いことでしょう。

文字通り警官が命懸けの職業であるこの街で、警察署長が警官の過剰な暴力に抗議する市民活動に参加したというのは本当に凄いことだと思います。オキュパイ運動の時も、市民を弾圧するように市長から指示されて「それは我々の仕事ではありません」と毅然と拒否した警察署長がいましたが、良くも悪くも、そういう振り幅の広さがアメリカの魅力だと思います。

2015年12月8日火曜日

ひとりでいることの何が悪い? TED TALKより

声がでかいせいか誤解されがちですが、僕の90%はオタクで出来てるので、本当は一日中だれにも邪魔されずにマンガを読んでいたいタイプです。
でかいバイクに乗ってるのでアウトドア派だと思われがちですが、あれはヘルメット内で一人っきりになってアクセル&クラッチワーク、ブレーキング、体重移動を確認してるだけで、実は究極のインドアです。

2015年12月5日土曜日

「発音は気にせず」は良くない


プレジデントネクストVol.7  1日で、しゃべれる!「英語」



最近流行りのこういう扇情的なタイトルは、それだけでケッて感じで普段なら手にもとらないのだけど、どんなこと書いてあるのだろう、いっぺん見たろうと思って手に取りました(結局引っかかってる?)。
そしたら意外と内容はマトモで、思うところが多々ありました。日本語話者が陥りがちな間違いの解説が充実していて、特に英語初学者にはたいへんお得なムックだと思います。

しかし、最近この手の本によく書いてある「発音を気にしなくていい」という論調には異論があります。



ここに書かれている「発音を気にするな」の趣旨が「発音の悪さを畏れず、どんどんアウトプットしよう」ということなら、総論賛成。でも僕は、未だに日本では英語学習において発音軽視の傾向が根強くあり、それが日本語話者の英語習得をより難しくしていると感じているので、英語学習指南書にこういうことが書かれていることに強い違和感があります。
はじめてNYに行ったとき、道を尋ねてもchurchが発音できなかったために、何を探してるのか伝わりませんでした。バークレーで僕らが住んでいたアパートはHearst Avenueにあったけど、Hearstが発音できないために苦労しました(いまだに発音できません)。英語は日本語と違って同音異義語が少なく、単語が違えば音も違う言語なので、ある程度は相手の予測の範囲内に入る発音ができないと、いくらネイティブでも文脈から予測するには限界があります。ましてや、非英語ネイティブの英語話者には全く通じないでしょう。僕は渡米当初、母音が曖昧すぎて何をしゃべっているのか分からないと指摘されました。その次に苦労したのはLの音です。全部Rになっていると言われました。
日本では発音が酷いのに高いリスリング能力を持っている人も結構いるけど、普通は発音を練習することがリスニング能力向上の近道だと思います。TとかTHとかLとか、日本語に近い音がない音をできるだけネイティブに近い音を出せるように繰り返し練習していると、必然的に日本語の五十音とは全く違う英語アルファベット独特の音を意識するようになるからです。
例えばgirlgirlの音の集合体であって、決してガールやガアルではありません。発音を意識するようになってからLazy Tongue(怠け舌)と呼ばれるアメリカ人ですら、girlcarでもRの音をちゃんと発音していることに気付きました。
それに英語の発音って以外と法則に忠実だから、発音に意識してトレーニングしてると、初見の漢字でも何となく読み方が分かるのと同じように、初見の英単語でも読み方分かるようになりますよね。

あとずっと気になっているのが、個々の単語やアルファベットの発音指南書はあっても、英語独特のリズムでしゃべらないと相手に何を言っているのか伝わらないことを指摘している学習書が、全然見あたらないことです。アルクの教材のように部分的な音の連結(リエゾン)や崩れ(リダクション)を解説したものはあるけど、一つの文章全体、例えば Do you have any idea? をどういうリズムと音程で発音すべきかを解説している市販書を見たことがありません。
英語は日本語や韓国語と違って、常に大きな抑揚とリズムを伴います。人間は予測の範囲内の音しか聞き取れないので、英語ネイティブは英語の音程やリズムと大きく外れた文章は聞き取ることができません。歌詞が合っていても音程が大きく外れた歌い方だと、聞き手は何の歌か分からないのと同じです。そういう意味では英語は、僕のようにリズム感も音程をとる能力も人並み外れて欠けている極度の音痴には、最も修得が難しい言語だと言えるでしょう。
そんな僕が留学前に、たまたま日米英語学院の梅田校を選んだのは福音でした。日常会話で実用的なフル文章約100題を正しいリズムで読めるよう、千本ノックよろしくひたすら発話させる高木先生の授業があったからです。日米は講義の録音が推奨されていたので、渡米後半年くらいはひたすら高木先生の授業を聞きながら例文を口ずさんでいました。

プロのミュージシャンは英語習得が早いと言われるのは、彼らがリズム感と耳から聞こえたままに音を再現する能力に優れているからでしょう。
僕の友人でも英語学校にまともに通うことなく、オーストラリアでしばらく暮らしただけでビジネスで通用するレベルの英語を身につけて帰ってきた奴がいます。ヤツの場合、中高大とまともに英語を勉強してこなかったことが功を奏した面もあるとは思いますが、聞こえたままを真似する素直さと能力がそんなことを可能にしたのでしょう。
ただし、この方法は僕には逆立ちしても真似ができません。リズム感と音程をとる能力が決定的に欠けている上、間違って覚えたカタカナ英語の発音が大量に脳内にこびりついているからです。

友だちへのバースデイカードに「ハッピーバーステイ」と書いていた娘に、妻が「テイちゃうで、デイやで」と突っ込んだところ、アメリカ人の友だちもTV俳優も「バーステイ」って言ってると反論されてたことがありました。
で、試しにbirthdayを実際に発音してみると、確かに娘の言うとおり「バーステイ」になります。Dの音を出そうとすると舌先をしっかり上顎に付けないといけないけど、THでいったん舌先を歯の間に思いっきり突っ込んでいるので、舌をグッと引いて最後のY音に行く前にわざわざ舌先を上顎に持っていくのが面倒だから、上の歯先にちょんと触れるだけのT音に近くなるんですよね、たぶん。

いったん間違った音で覚えてしまった大人には、こんな風に素直に音を聞き取ることは難しい。中学入ったとき、最初に英語を教えてくれた白川先生は英語独特の音を一生懸命教えてくれたけど、思春期満開だった僕ら男子はムダに反発してカタカナ英語まっしぐら。あのとき先生に苦労かけたバチが、今こうしてきっちり当たっているのだと思います。

2015年12月2日水曜日

相談者からのいただきもの〜その2

先日書いたネクタイと並んで、相談者からいただいた中で思い出深いものと言えば、健康ドリンク1ダース(ユンケルのようなもの)。
逮捕や勾留された人が弁護士会に連絡すると、1度だけ無料で弁護士が派遣される当番弁護士制度。その日は当番割当日だったので、いつも通り弁護士会からの要請で出動。
失職したため家賃代を稼ぐべく、すぐに収入になる仕事を求人誌で探して見つけたチラシ投函バイト。行ってみたら風俗チラシ。マンションポストに投函してたら住人に通報されて、住居侵入で逮捕勾留されたという青年。明らかに勾留の必要性に欠ける事案だけど、そんなこと言ってても何も解決しない。普通なら、数日後の勾留満期に略式裁判で罰金刑になるはず。問題は、勾留までしてしまっている事案で罰金の支払い確保できるかどうか分からない時に、果たして検事が略式手続きを選択してくれるかどうか。もし検事が略式を選択せず正式起訴されてしまうと、1カ月以上も身体拘束が延びる可能性が高い。
事務所に戻り、友人の検事たちに電話して「自分やったらこんなときどうする?」と尋ねてみたところ、2人とも「うーん、悩ましい。略式は採らないかも」と言う。

こりゃますますヤバいと意を決して、郷里のお母さんに電話を掛ける。
「もしもし、私は弁護士ですが、息子さんが警察に捕まりましてね」。
誰がどう聞いてもオレオレ詐欺だ。案の定「そんな電話しょっちゅう掛かってくるんですよ。私は騙されませんからね!」とお母さん。「お母さん、僕のことは信用せんでええから、とにかく○○警察に電話して!」とかろうじて言い切ったところで電話を切られた。
こらアカン。放っておくわけにもいかないので、もういっぺん接見に行き、一部始終を報告して、すぐにお姉さんとお母さんに手紙を出すようにと伝えた。
数日後の夜、事務所で1人で仕事してると誰かが訪ねてきた。チラシ投函で捕まった子だ。手には健康ドリンク1ダースをぶら下げてる。結局、お母さんが警察に電話して詐欺じゃないことが分かったので、罰金納付の手配をしてくれ、略式で出てこられたとのこと。「わざわざ2回目の接見に来てくれたことがすごく嬉しかったから、お礼に来た」。手みやげに健康ドリンク1ダースを選んだ理由は「先生、疲れた顔してたし、仕事めっちゃ忙しくて大変や言うてたし」。接見時に打ち解けるために世間話をすることはよくあるけど、どうも彼には仕事の愚痴を話していたらしい。両手に瓶12本分の重みを感じながら、心の中は嬉しさ半分、情けなさ半分。
これまた今から10年ちょっと前のお話です。