2016年9月5日月曜日

歳をとるのは楽しい

昨日ある芝居を見に行って、「自分は本当に恵まれてるなあ」「歳をとるってホンマに楽しいことやなあ」と思った。
“STRAYDOG”Produce公演 =2016年夏休み特別企画=「問題のない私たち」
http://www.straydog.info/stage/monwata2016.html

今から9年前、友人の成見暁子弁護士に強引に誘われて(本人はそう思ってないだろうが…)関わることになった大阪憲法ミュージカル。「市民出演者100人なんて集まるわけないやん。だいたい大阪でミュージカル観る人なんておるんか?出演者集らんかったら彼女もあきらめるやろ」というのが、実は当初の本音。ふたを開けてみれば100人以上の出演希望者が集まり、嬉しい悲鳴を上げることとなった。

9年経った今、このとき小学生〜大学生だった出演者たちの幾人かが、プロのエンターテイナーとして或いはそれを目指して頑張っている。当時は考えもつかなかったほどSNSが発達したおかげで、彼女たちの奮闘をほぼリアルタイムで知ることが出来る。

彼女たちをここまで育て上げた親御さんたちの苦労は計り知れない。時間的・経済的・精神的にもかなりのエネルギーを割いたことだろう。何より膨大な愛情を注ぐことがなければ、あんな風に他人を魅了する個性は育たない。
そして僕はといえば、そんな苦労を全くすることなく彼女たちのパフォーマンスを観る喜びを享受し、無邪気に自分の子が活躍した気持ちになっている。うちのカミさんが言うように、まさに「子育ての上澄みだけを啜っている」状態。10代20代では考えられない、中年だけが得られる特権だ。

湯浅誠さんの名著「反貧困」(岩波新書)を思い出した。その中におよそ人が貧困に陥るかそうでないかを決める要因として、助けてくれる或いは助けを求められる人のつながりがあるか否かが大きい、その人と人とのつながりを彼は「結」と呼んでいるという下りがあった。昨日の経験は、まさにその「結」だ。9年前、まがりなりにも弁護士仲間たちと市民ミュージカルをプロデュースするという大それたことにチャレンジできる環境があり、そのときに出来た人と人とのつながりがこうしても今も自分1人ではとうてい得られるはずもない喜びを運んできてくれる。

これは、大阪万博の時に建てられたエレベーターもついていない公団住宅がほぼ世界の全てだった小学生時代の自分には、想像することすら叶わない未来だ。いじめっ子や教師はもちろん世の中全てが敵だった中学生の自分にも、社会に出たくないとバブル期特有のピーターパン症候群に苛まれていた高校生の自分にも教えてやりたい。「お前の人生は歳をとればとるほど楽しみが増えていくよ」と。

日々の仕事はけっして楽ではないし、ときには怒鳴り合う夫婦ゲンカもするし、そして自分自身の子育ては絶え間ない悩みと苦労の連続だ。それだけに、それだからこそ「憲法ミュージカルの子どもたち」の輝きが、あちこちガタが来はじめている中年のおっさんの背中を勢いよく押してくれるのは本当に有り難い。