2015年11月8日日曜日

忘れられない医療事件

クライアントは、手術で患者を死なしてしまった外科医とその勤務先病院。手術中の思わぬアクシデントで手術時間は大幅に伸び、術後の容態も良くありません。それから患者さんが亡くなるまでの数日間、彼はずっと病院に泊まり込み、亡くなる前も亡くなった後も昼夜を問わず家族からの呼び出しに応じ、問われたことには何でも答えました。
ところがそういう場面で説明すればするほど誤解を呼ぶもので、後に法的手段をとられたときの書面には、あのとき主治医はああ言ってたのに、このときはこう言ってたという類のことがたくさん書かれていました。
今回のことで、一生懸命説明する今のスタイルをもう辞めようかと思ったこともある。でも、それを辞めると医師としての自分の存在意義がなくなるので、これからも同じようにしていこうと決めた。こういう趣旨のことを、僕と同世代の外科医は言いました。
責任を問われるリスクを下げるために曖昧な説明をするスタイルを嫌悪していた僕は、弁護士登録当初から極力はっきりとした言い方をすることを心がけていました。そのこともあってクライアントから誤解や反発を招くことも多々あり、特にその当時は頻発していたため、かなり動揺していた時期でした。
ちょうどそのタイミングでこの外科医の言葉に直面し、「俺もこのスタイル辞めたら弁護士続ける意味ないやん。おんなじや」と腹をくくることができたのです。患者の命そのものを預かってる医者ですらここまで覚悟してるのに、たかが弁護士が何を甘っちょろいこと言うてんねんっちゅう話ですわな。
今も相変わらず同じパターンでクライアントと衝突し、精神的ダメージを負うことはしょっちゅうですが、そのことでスタイルを変えようとか動揺することは全くありません。
まあ、いつまで弁護士を続けるのかという根本問題では、いまもグダグダなままですが。

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